「祝!連載10周年!大人気感謝巻頭カラー!」だそうです。もう10年この四姉妹の生活に付き合っているんですねえ。このシリーズが始まった頃は4巻くらいできれいにまとまる佳品って感じかな?と予想したものですが……。
今回は作品についての先生と編集さんの座談会もあってとってもお得でした。
以下ネタバレありの感想です。
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「海街diary」30 恋と巡礼
妊娠初期のチカを心配して、一緒にパワースポット巡りをすることにしたすず。全部で8ヶ所の内3つをクリアして、時間がないので残り5ヶ所を半日で回りたいと、いつものサッカー仲間に相談しています。
地図関係は風太だろ!得意分野じゃね?おまえついてってやれよ!と風太にとっては願ってもない展開になりそうだったのですが。
すずにしてもそう出来たら楽しいし、彼氏の頼りがいがあるところも見られて嬉しい。でも「安全祈願」と合わせて「安産祈願」もしたいわけで、風太がいると都合が悪いしで、チカちゃんと女子旅だから困ったらメールするね、というものの、風太は家庭の方針でケータイを持っていないのでした。
何かあったら兄きのケータイに連絡して。回る順番は明日までに考えてくるから。自分に出来る範囲で協力してくれる風太に、
「うん。サンキュ」と言いながら、秘密が増えていくことを心の中でそっと謝るしか出来ないすずなのでした。
家に帰った風太は即、スマホを買ってくれるよう父に直談判します。(チームの連絡網に入れないので)オクトパスのキャプテン業務に差し支えるし、料金だって割引があるはずだ、と。
しかし父の返事は、「(高校に入るまでケータイ禁止は)ウチの家風だぁーっ!!」と取り付く島もなし!
一方香田の家では11時から5ヶ所回るというチカとすずのハードなパワスポ巡りについて、愛の狩人よっちゃんが鋭いツッコミを入れてます。
チカ最近食欲落ちてるのに大丈夫なの?あんたたち最近よくいっしょに出かけるね?
自己中かと思いきや意外に鋭い観察眼を持っている佳乃に、隠し事のある二人はたじたじ。幸からも水分補給ちゃんとして熱中症に気をつけるのよ、と助言をもらって、素直に頷きながらも後ろめたさを感じます。
すずの部屋に引っ込んで、お姉ちゃんたちに早く話した方がいいと訴えるすずですが、チカは煮え切らない返事です。話したらハマちゃんの耳にも入ってしまう。大事なチャレンジの前に心配をかけたくない。
まだ中学生、そして他人の幸せのために自分を押し殺して我慢を重ねていた経験のあるすずは、自分はチカを説得する言葉を持っていないと、姉たちに心の中で謝りつつ、明日は無理せず行こうねとチカを励ますのでした。
翌日は晴天!かなり暑い一日になりそうです。
まずは鎌倉宮。百円のお賽銭で得た杯を岩に投げつけて割ることで厄を祓います。
お次は荏柄(えがら)天神。風太の指示だと徒歩になっているけど妊婦だしバスに乗ろうか……とすずが考えを巡らせていると、思い出すねえ、とチカが言います。
すずと初めて会った時もこんな風にセミが鳴いてた。すずは子供なのにすごくしっかりしてて、なのにあたしは父親の葬式だってのに旅行気分で、今日もこうしてすずの世話になっちゃってる。ダメなおねーちゃんでごめんね。
末っ子特有のたくましさと持ち前の明るさで、自分を卑下していても卑屈さを感じさせないのがチカのいいところですね。
チカちゃんがお姉ちゃんで良かったよ、チカちゃんとは遠慮なしになんでも話せるもん、と答えるすず、すっごくオトナ……。ここのやりとり、後半でガツンときますので要注意ですよ!
おうちの酒屋さんの配達の手伝いをする風太。登場人物が多いので、結構めまぐるしく場面が転換しますね〜。跡取りのお兄さんと一緒にトラックで出た風太、すずたちが目指す由比若宮のある材木座方面へ配達……と思いきや、お兄さんがちょっと寄り道。なんとケータイショップ!
「スマホ買ってやる。おやじはおれが説得する」
そのかわり志望校絶対合格しろって、テルヨシ兄かっこいー!風太と父の話を立ち聞きしていた時からこうなるって思いました(^^)風太大喜び。
チカは宝戒寺で草鞋のお守りを買いました。これ写真で見るとちっちゃくて可愛いですね。人気のお守りみたいです。足腰のお守りだから山登りには最強でしょ?というチカに、ちゃんと由来や効果を考えて選んだ8ヶ所なんだな、と感心するすず。
チカちゃんは本当に、自分のことより店長さんが大事なんだね。
すずが素直な感想をもらすと、それはすずもでしょ?と返されます。
さっきの荏柄神社は道真公の天神さまだよ、すずはもう進学先が決まってるのに、一生懸命拝んでて、合格祈願のお守りも買ったよね。
「……あたしができることって、このぐらいしかないし」
前回のチカと同じセリフ。遠く離れてしまう大好きな人への想い。この共通点が今の二人を強く駆り立てているんですね。
そして場面変わって山猫亭。46ページ中まだ14ページなのに7回目の場面転換!1ページだいたい6〜7コマで、線のきれいな読みやすい絵柄で絵的にはすっきりしているんですが、セリフの情報量が多いので、やはり漫画を読みなれたオトナのためのマンガだなあ……と改めて思います。
山猫亭のお客は店長さん。どうやらスポーツショップの業務として登山スクールなど山関連の事業を展開するという社長方針で山に復帰することを決めたと。
せやけど、それだけやないやろ。マスターに指摘されて、店長も認めます。
山に連れて行きたい人がいる。あの景色を一緒に眺めたい人がいるからもう一度……とそう決心出来たんだ、と。
エベレストに奪われた生命を忘れることは出来ない。山は恐ろしい……でも美しかった。天候に恵まれず、ほんの一瞬雲が切れた時に見たあの姿、人は本当に美しいものの前では言葉を失くしてしまうのだと知った。あの山の神は苛烈な女神だが、それでも惹かれずにはいられない。
「話す相手間違うてるのと違うか」
このツッコミも二度目ですね!折りよく坂下課長と佳乃が営業にやって来ました。
鉢合わせになった店長さん、佳乃に「お姉さん!」と挨拶してしまいました。仕事中なのと何かと気まずいのとで、適当にごまかす佳乃。
狭い世界なので、もちろん課長と店長は仕事上の顔見知り。浜田さんヒマラヤは頂上アタックですか?と食いついた課長(男のロマン発動?)に、
いいえ。ぼくはアタック隊員ではなくサポートのみです。そう答える店長の顔は穏やかです。エベレストへの複雑な憧憬は心の整理がついているようで、何か吹っ切れた顔つきです。
「ぜったい無事に帰ってきてくださいね。生きてナンボですよ!」
佳乃のエールに「はい、必ず」と答える店長なのでした。
後半の感想が書きたいのに、書いても書いても終わらない!すみません、続きます!まだ半分くらいです!
②はこちら。③まで続きそうです。