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「海街diary」34 幸福
勤務後の夕方、ヤスの一人暮らしのマンションを訪ねた幸。アポなし訪問らしく、ヤスはびっくりしています。
「うつるよ!」
とマスクのヤスは遠慮しますが、インフルエンザでもないし少しくらい大丈夫よと言っているところに何やら室内からいいニオイが。
晩メシ。よかったらいっしょにどう? と誘われた食卓にはキムチ鍋焼きうどん、卵と豚肉のせ。副菜にほうれん草のしらす和え。風邪にはビタミンとタンパク質!と、まあ、完璧……。
「料理、得意なんだ」
キッチン広め、冷蔵庫大きい、調理器具揃ってる、とついチェックしてしまう幸。
両親が共働きだったから。なんとなくいつのまにかね、と何でもないことのように答えるヤス。……あら、ヤスって幸のパートナーとして最適じゃないですか〜? 私が友人だったらアタリだよ! って言ってしまいそう。カンペキ。
向かい合って食べながら色んなことを話します。
「トマトちゃんつぶし」を作ってあげるつもりだったと説明する幸に、香田家のソウルフード食べたい! とくいつくヤス。あなた元気だからダメ、とあっさり却下w
旅行みやげ持って坂下さんと尾崎さんにあいさつに行った、オクトパスは二人に任せて監督は引退だ。鍼灸師の学校通っても今より時間取れるようになるから、
「また旅行行こうよ」
「うん」
「なんかテンション低。楽しくなかった?」
「ううん、そんなことない。すごく楽しかった」
今度は鉄道の旅とか……と話を合わせながら、手放しで楽しんでいい付き合いを自分がしていることに戸惑っているんだ、と自己分析する幸。以前、結婚している人を愛したこと、そのことは後悔していない。その時は自分にも相手にもどうしようもなく必要な恋だった。でもヤスとの付き合いはとても楽だ。やっぱりどこかで不倫をしている自分を、自分で許せていなかったのか……。
「ありがとう」
ヤスの一言が物思いに沈む幸を現実へと引き戻します。
「心配してくれてうれしかったよ」
こっちがごちそうになっちゃって、お役に立ててませんけどね、と少し残念そうな幸に、そんなことないとヤスは言います。
「病気の時心配して来てくれる人がいて、いっしょにごはんを食べられる。それは幸福なことだよ」
幸が弱ってたらおれがメシ作りに行く、「トマトちゃんつぶし」ね。
心を預けた分だけ、同じように愛情が返ってくる。それが幸福かと言われると、正直よくわからない。だけどヤスと笑って過ごすこの時間はただただ愛おしい……と思う幸でした。
同日、佳乃は公証役場でお仕事。福田さんの遺言書の作成です。ノエル住職といっしょに立会人を務めました。
知り合いに何一つ残さない遺言でした。ミドリ(マサの母)の二人の息子への「焼肉代20万」を除いて。これは二ノ宮さんがミドリの息子たちに残した額と同じ。
「福田さんらしい」
「確かに」
と言い合う佳乃と住職です。
夜になって、チカとすずがタブレットでエベレストのアタック隊の報告?を見ています。
天候が回復するだろう10月17日を頂上アタックの日と決定する──浜田さん文章上手い、カッコいい〜とひとしきり興奮していたすず、決行日が明日だということに気付きます!
今頃は7300m付近かな──順調に行けばね。「山登りはお天気に左右されるから」
と意外にも冷静に台所に立ったチカですが、
「すずー梨食べる?」
ときかれて、すずにはわかりました。
(いつものチカちゃんは梨なんか剥かない。本当は心配でたまらないんだ)
そこへ突然に来客が。なんと直人です。
なんで急に直人が?! と戸惑うすずをよそに、チカと直人は和気あいあい。
ヘプバーンみたいだー。
わかる? 狙ってみた。
と、チカのようなタイプがストライクゾーンの直人がほめほめでチカもご機嫌。なんかずっと前の伏線が生きて面白いw
実は昨日すずから直人が鎌倉に来ていると聞いて、チカがLINEで寄っていくように連絡を入れていたのでした。
納得のすずに直人は、明日金沢に帰るからその前に二人に頼みごと、とズバッと切り出します。
「チカちゃん、すずちゃん、モデルやってくれない?」と。
もちろん二人同時に「え?!」という反応。
この時間、佳乃は残業……ではなく、尾崎酒店のミニバーで、仕事の報告会を装った(?)デート中です。
福田さんに言われた通り、遺言書のあらましを課長に伝えます。
福田さんの唯一の望みはカフェ山猫亭を「あのままの形で残す」こと。そのため古い建物の保存活動をしているNPOに全てを寄付すると決めたのです。
色々複雑な事情が語られます。皮肉で、また奇跡のようなめぐり合わせ。……それも今ではもう、すべてが過去。時に押し流されて消えて行きます。
しんみりした佳乃に光良が、こちら「布袋」さん(福田さんのハンドルネーム)から。新作の大吟醸を生前贈与だそうです、と枡を出してくれました。
粋な計らいに大喜びの佳乃。初めて会った時の「いじわるじじー」から今では全然印象変わりましたよね! と、「変化する」という生きている醍醐味を味うのでした。
は〜全てのことが小ネタも含め、この世界で緻密につながっているなあ……と改めて感心。あと12ページに緊迫の展開が!