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「海街diary」31 姉との旅
東海道新幹線のこだまでJR掛川駅へ。駅舎が外にあるローカル線に乗り換えということで、天竜浜名湖鉄道(天浜線)の掛川駅に移動?駅がそれっぽくないですが、天浜線を検索すると「日本の原風景」が売りで、沿線には茶畑が広がるとのことなので、多分アウトラインだけこれで後は創作だと思います。
すずは不安の余り、美少女にあるまじきコワイ顔になっちゃってます。
でも幸に、すずと似てる子がいるわ。よく日に焼けていかにもスポーツやってそう、特待生の子じゃない?と言われて見ると、制服を着たショートカットの子と目が合います。つい会釈するすずに、向こうの子もぺこりとあいさつしてくれます。
よく見ると駅構内には他にもそれらしい親子連れが何人も。
みんなそれぞれ違う制服姿で、不安そうに俯いています。
「みんな同じ。新しいことを始める時は、誰だって不安でざわざわする」
そう微笑む幸の横顔を、もの問いたげに見つめるすず。
どこまでも続いていそうな田園風景の中を、ゆったりのんびりと進む電車。
窓から外を眺めていたすずが幸に問いかけます。
「お姉ちゃん、この緑のモコモコ何?」
「ああ。お茶畑よ」
摘み取りやすいように剪定してあるのよ。
「そうなんだ。すごい。ずっと先まで続いてる。
海みたい」
すずは楽しげに窓の外を見つめます。
ここは、ちょっとあざといととるか、素直に不安なすずの気持ちに寄り添うか、好みがわかれそうなセリフではあります。
一方次女と三女が出かけた先は由比若宮でした。つつがなく八巡りを済ませたチカはすっきりです。
この辺外回りでよく来る、という佳乃。
よっちゃん変わったね〜。以前はシゴトよりオトコ、しかもダメ男専門かってくらいだったのに。今の方が生き生きしてるよ、とチカ。
……まあね。窓口業務してた頃はバカみたいな借金とか完全に他人事だったけど、人間て生きてりゃ色々あるもんね。どうしようもないことが。
だから今は、普通の人がーー行き詰まって引き返せなくなる前に、手助けできればって思うんだよね。
すっごーい、よっちゃん。デキるOLだ、キャリアウーマンだ、と妹に持ち上げられて調子に乗る佳乃。でも今日はあくまでランチはチカのおごり、とそこは譲らない。
「茶畑」駅。なんとも身もふたもないネーミングの木造の駅舎を写メるすず。
学校は丘の上。駅から徒歩7分。その名の通り駅前に茶畑しかない。
なんで学校って高いところにあるんだろう、と無邪気なすず。広大な敷地をお安く用意するためじゃないっすかね?すずちゃん(^^)
日陰もないのぼり坂を見てコワーイ顔の幸と一緒に学校へと向かいます。
「お姉ちゃんもざわざわした? 緩和ケア病棟に移る時」
似たような家族連れから少し離れて、すずがそう切り出します。いつか聞いてみたかった、というように。
「人がいっぱい死んじゃうから?」
と珍しくストレートなすずに、主任に昇進するのとセットだったからね、そんなメンドーなこと自分に出来るかなと思ったわ、と幸。
「でも、どんなに手を尽くしてもすべての病気が治るわけじゃない。
治らないことによりそうのも大切なことだと思ったの」
最新医療を学ぶために一緒にアメリカに行こう、と言った不倫相手と別れたのもこの時期。幸にとって人生の大きな転機になりました。
お父さんも治らないって、みんなわかってたのに。
陽子が言うならーーって最後まで抗ガン剤とか頑張って辛そうだった。
どうしてあたしがもっと頑張って訴えなかったんだろうって時々思うの。
「そうすればお父さん、あんなに苦しまなくてもすんだかもしれないのに」
「お姉ちゃんたちにも会いたいって思ったかもしれないのに」
もっと時間があれば。緩和ケア病棟に移ってたら。あたしが陽子さんをきちんと説得出来てたら。心残りがないかお父さんの話をもっと聞いてあげてれば。……
「すーず!」
いくらでも繰り言が出て来そうな小さな妹の名前を呼んで、幸は上を向かせます。
「もう、いいの!」
幸は笑ってやさしく言います。
「夫婦の間のことはあたしたち子供にはどうすることもできないの」
だからもういいの。すずは前だけ、未来だけ見つめてたらいいのよ。
見て。みんな行ちゃった。あたしたちも急がないと。
そう言って先に歩き出す幸の背中。夏の光。抜けるような青空と、今が盛りときらめく緑。畑を吹き抜ける風。
一歩を踏み出す怖さが、すずに過去を振り返らせているのです。
初めて出来た故郷を離れるこの選択は間違っていないだろうか?いつか後悔することにならないだろうか?
ギュッと目をつぶって、全身に光を浴びたすずは目を開けた時には微笑んで、駆け出します。
「お姉ちゃん!走って!チコクするよ!早く!」
小洒落たフレンチビストロでランチ中の鎌倉組。
明日浜田さんが出国するため、婚姻届を出すタイミングが明日しかない、というチカ。
そうか、籍入れておかないと、万が一の時生まれて来る赤ちゃんが大変ですもんね。
あれ、来年になったらすずは寮に入るし、あんたは結婚して引っ越しだし、幸ねえと二人きり⁈と急に焦り出す佳乃。
そこへすずからメールが。
学校の写真、女子寮で歓迎してくれたバレー部の先輩たち、「岡山から来た加藤ちなみちゃん(175㎝!)」。
同じようにメールを受け取り、なんだ、もう友達できてんじゃん、と安心して独り言をいう風太。
にやけているところをちょうど部屋に入って来た兄に見つかって、勉強はどうした!と叱られますが、すずの先行きを心配しているのはテルヨシも同じ。一緒に写真を覗き込んで、こりゃ茶畑だな、良さそうな学校じゃん、よかったな、とうなずきあう兄弟です。
ビストロできっちり妹に奢らせた佳乃がふいに、お母さんには連絡した?と言い出します。
「大船がとりあえず連絡しといてくれるって」
でも自分のことでしょ。結婚だけじゃなく子供も産まれるんだから、ちゃんとしないと。
「お母さん、喜んでくれるかな」
テンションの低いチカに対して、佳乃も決して高いとはいえず。
「……くれるんじゃない?初孫だもん」
ゆっくり学校を見学してから「茶畑」駅に戻ると二人以外人影はなく。
「のどかでいいところ」
「ぜったい夜遊びできなさそう」
「海がないのがちょっとさびしいかな。……田んぼやお茶畑が海みたいだから、ま、いっか」
吹っ切れたように駅の外を眺めるすずに、幸が声をかけます。
何かあったら、家族の誰でもいいからなんでも正直に相談して。
自分の力で変えられないことに思い詰めないで。
「どうしてもだめだと思ったら帰っておいで」
真っ直ぐに合わせていた目をほんの少しだけ伏せて、「うん、わかった」とすずはこたえます。微笑んで、
「きっと大丈夫」。
鎌倉の家にお茶づくしのお土産。お茶サブレ、お茶バームクーヘン、深蒸し茶。そしてよっちゃんの好きなうなぎパイ。
やっぱり遠いねー疲れたーとくつろぐ遠征組に、チカがお願い。お姉ちゃん、表札書いて!と。
もうおわかりですね、ちょうど手ごろな板があることを!
カマボコ板!
達筆&リユースで、新しく素敵な「浜田」表札が付きました。
すべて世はこともなし。
次回は4月号(2月28日頃発売)です。すずの新しいお友だちのGKの子、かしこそうで可愛かった。「3月のライオン」でも高校入ったとたんにひなに可愛い親友が出来てたし、こういうのやっぱりいいなあ〜(*´∇`*)
今回はすずが美少女で楽しかった!