「Papa told me〜小さな愛の歌〜」4巻 榛野なな恵 感想

「Papa told me〜小さな愛の歌〜」4巻  榛野なな恵  感想


前作から1年半以上も空いたので、もしや一冊買い忘れているのかと思いましたが、3巻の次の4巻で間違いないですね。コミックナタリーによると2015年は榛野先生が右手首を骨折(!)されて休載が続いていたことが原因のようです。知らなかった……。
Amazonのこの↑小さな書影でも、おしゃれで可愛くて上品なPTMワールドに何の変化もないことがわかりますので一安心ですね。この色遣いうっとりします、ポストカードコレクションとか出して欲しい。
以下ネタバレ(っていうほどのことがあるかな?新しいことは何も起こらない閉じた世界ですから)ありの感想です。
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「パパトールドミー〜小さな愛の歌〜」4巻 感想

11話収録。
「シェードツリー」
誰にとっても特別な夏の思い出について。スナップ写真に写り込んでいる、思い出管理人という発想が実にロマンチックで素敵。お母さんに永遠に恋し続けるお父さんが切なくて、ちょっと羨ましい。
「ホワイトプルメリア」
正反対の性格の姉妹のお話。以前だったら倍くらいのページ数で多分姉側の心情をもっと掘り下げて……ってなりそうですが、小話らしく仲良し家族で優しい読後感にまとめたのがいいですね。深くて尖った話は読むのが少々しんどいという、ココハナの読者のニーズに合わせてくれているんでしょうか。
「メイズガーデン」
お仕事が煮詰まっているお父さんと、それに気付かない振りをして低刺激生活モードで暮らす知世ちゃんがささやかな気分転換を試みるお話。何度も繰り返し扱われる題目なんですが、お互いに対するデリカシーのある接し方は、家族間では非常に難しく貴重なものでありますので、何度でも注意喚起してくれるのはありがたいことです。
デリカシーって「感情・心配りなどの繊細さ」という定義なんですね、今さらですが。単なる気遣いのさらに一段上の繊細さ……視野が広くないと発揮出来ないし、年とともに身に付けたいものですが、身内相手となると本当に忘れがちなので気を付けなきゃ。
「レイニーカフェ」
ハロウィンの表紙絵が可愛い!アリスカフェのお姉さんたちのお話。こちらも定番ですが、この回は双子がカフェを開こうと思った動機が語られています。
「雨に濡れ 歩き疲れた旅人が ふと目にする 小さな灯り…
ドアを開けると 乾いた暖かい部屋
ただよう ビスケットの甘い香りと 白い湯気の立つ おいしいお茶…
ささやかだけど この上ないひとときの幸せ」
まさに!読者がPTMに求めているものがこれ〜!
あと「鉄腕カフェかっ」っていう知世ちゃんのツッコミが、先生もそんなテレビ見るんだ(^^)と思って楽しかったです。
「グレートボヤージュ」
生きている人間には「後悔」より「航海」の方がおすすめっていうちょっといい話。
気力を失って周囲に無関心になっているように見える人の手をうっかり離してしまうって、かなりよくあることだけに、この女性の2年間の後悔が胸に迫ります。
「ハーティグリーティング」
知世ちゃんの母方のひいおばあちゃんが初登場!自分で立ち上げた宝飾関係の会社の元会長で、3度結婚して長らく海外在住だった、今は高級な介護施設にお住まいの、千草ママいわく「とてもすてきな人」。
江戸時代の人でしょ、お土産は和菓子がいいよって言っちゃう知世ちゃんが可愛い。
でもひいおばあちゃんが何を言い出しても、相手に合わせた対応をしてくれる?とお父さんに頼まれて、出来るよ!得意だよ!とそこは賢い知世ちゃんです。
案の定お母さんの振りをすることになった知世は「お団子のように円満なの」と結婚生活を表現します。可愛いな!信吉さんは特別な人で、
「それにえーと… いつも 私のことを 一番に考えて くれるの!」
ここは帯にも引用された、曽祖母と心の通じ合う肝心要の名場面。
かなり古い作品なんですが、藤田貴美&山下友美の共著「花と狼の帝国」で、溺愛する妹がBFに夢中になっているのを危惧して、兄が言って聞かせます。
「いいかい、シャルロッテが彼を好きなのと同様に、彼がそれに答えてくれるのかって、俺はそれがいいたいんだ。(中略)本当に心からお前を想ってくれる男だけがお前に完璧なんだ。それをちゃんと見極めなきゃあ」
そう、愛されていることだけが重要なんじゃなく、知世そして千草も信吉のことを一番に考えている、小沢健二じゃないですが、愛し愛されて生きることが今の幸せを形作っているんですね。自分を愛してくれない人を愛してしまう悲劇もよくあることで、それが美しい側面を持っていたりするのも人間の営みには違いないですが……。
引用されている「春の日の花と輝く」の歌詞が、男女の愛、家族の愛、自分の人生に対する愛、すべてを包括していて感動的。
「ポニーアイランド」
知世の信奉者強くんが登場。「かわいいポニーに乗るっていうのは子供の特権」っていう言葉が響きました。可愛い子ども服を着るのも、水場があれば入りたがるのも、ただの公園の遊具で遊ぶのも、ダンゴムシを探すのも、みんな子どもの特権!失ってから気付くんですよね、もっともっと子どもがその特権を行使しているところを目に焼き付けておけばよかった!って。
「ティーフォーツー」
今度は北原さん。アンティークの価値の本質が何なのか語ってくれてます。
「こんなきれいで こわれやすいものが 何十年も大切に 人から人へ手渡され
今ここにあることが 感動なんです」出番ここだけなんですが、すごい良いこと言ってますよ!ティーカップの身になって考えてさせるお父さんもいいお父さん。
人生が続く限り、ささやかな幸福を、一杯の紅茶から。
「ジェントルレイン」
表紙の構図が好き。編集の丹沢くん、感じいいですね。お話はちょっとありきたりだったかも。
「ローズピンクサテライト」
お父さんがおしゃれにめったに本気を出さないことを気にする知世という、これも何回読んだかわからないくらいの題材なんですが、やっぱり好き。今後もいくらでも読めます。
「新しい服は新しい意識を生むの」という持論を展開する百合子ちゃん(と知世)が、「自分の価値観押し付けちゃいけないな…」というデリカシーある結論に落ち着くのがよかったです。
「フライ ザ フラッグ」
久しぶりに小学校で闘う知世ちゃん。知世は賢くていいなー…。「工夫して協力」が出来ない子の方が多いですからね。でもこういう理想も読むのは楽しいです。

詩情に溢れているけど理知的で、隅々まで計算の行き届いた安定の高品質作品。5巻が何事もなく1年後にまた読めますように。

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