「フラワーズ」2015年12月号 感想2 海街diary

[amazonjs asin=”B014TC15VW” locale=”JP” title=”月刊flowers(フラワーズ) 2015年 12 月号 雑誌”] 今月のフラワーズは「エントラ」が表紙でした。ちょっとクリスマス風味。表紙はみんなの笑顔が見たかったなー。可愛いですけどね。お花はなんだろう……?クリスマスローズか椿かと思いましたが、ちょっとわかりませんでした。
今月から面白かったものだけ感想を書こうと思います。
[adchord] 以下ネタバレありです。

海街diary28「遠い雷鳴」

巻頭カラー、すずと風太が江ノ電沿いの紫陽花に挟まれた小道を歩いている……ちょっと季節外れなんですが、作中の時期が6月だからみたいです。

修学旅行から帰ってきたすずは、連日のサッカーの練習で疲れているようで、休日に朝寝をむさぼっているところに三人のお姉さんがあれやこれやと声をかけ、四人揃っての朝ご飯です。
サッカーの話から、自然に風太を名前で呼んでしまい、佳乃に食いつかれるすず。とっさに誤魔化しますが、人生の先輩たちには付き合い始めたことはバレバレ。
「いい子よね」ときれいにまとめた幸に、
「うん。いい奴なの」と答えるすずの実感を伴った言葉に、誠実な付き合いをしていることを感じ取って感心するお姉さんたち。
男はカオじゃなくて中身だからね。佳乃もそう強調し、過去の発言を突っ込まれても、アタシも成長したからね〜とごきげんです。そして嬉々として休日出勤へ。
……もうこれだけで、新しい男が出来たとまるわかり。幸は相手が誰なのか薄々気がついているようです。
さて今日は風太たちいつもの4人が梅取りに来るとのことで、残った3人でおむすびを握って、幸が出勤して行った後、遅番のチカとすずはお喋り。ヒマラヤからのメールを二人で見て、「あの日の青空」の意味を教えてもらったすずは、
「そんなすごい青空見てみたいな」と若者らしく遠い空に思いを馳せますが、
「あの場所に行かないと見えないんだよ」と、チカの返事は思わせぶりで……。
場面変わって、梅の実を取る中学生たち。この木ももう古くて弱っているから、あと何年実をつけてくれるかわからない、そうすずが話すのを木の上で聞いてしまうと、上の方危ないからいいよと言われても、最後の一つまで大事に利用したいと思い、いつまでも実を取り続ける風太、「いい奴」なのです。
もう一人の「カオじゃない」男性といえば、坂下課長(失礼)。こちらも想像以上にラブラブでした。外回りついでにランチで寄った海猫亭でも、一気に気安さと親密さの増した会話だけで、「バレバレちゅうやつや」とマスターがこっそり注意してくれます。鎌倉中に噂が広まらんよう気ィつけたほうがエエよと。
「ぼくは真剣に好きなんです!ぼくには大切な人です!」
親切心かららしくないおせっかいをやいたのに、頭を下げつつも盛大にのろけられてしまい、当てられたマスターの顔が面白いです。
君の目の前でごまかしを言えなかったと謝られて、
「びっくりしたけどうれしかった」と佳乃も飾らず答えます。課長の前では佳乃が自然体で、嘘がないのがすごくいいです。
幸姉は仕事じゃなくて、デートだったようです。雷を避けて海辺の橋桁の下で二人、お互いの祖母の思い出を語り合います。時間の流れと共に気持ちが変わり、傷が癒え、いつのまにか心が近付いていたことを感じ、見つめ合い、遠雷を聞きながら口付けを交わします。
梅の話に戻って、みんなが帰った後も風太はすずの手伝いに残ります。彼氏ですから。二人は大船の大叔母の家に梅の実を届けます。歓待されて世間話をする内に、おばさんは進学先の決まったすずに餞けのように言います。
辛いことや困った事が起きた時は、必ず大人に相談することを約束してね、と。
まともな大人なら誰でも、子供を助けることが当たり前のことだから。
すずは素直に「はい」と答えます。
鎌倉の家に戻り、「ありがとーっ。明日ねーっ」とすずは自転車の風太を見送ります。生きているだけで幸福に包まれている。そんな子供時代を取り戻したようなすずの耳に遠雷が届きます。
雨を警戒して梅のゴミを物置に運んだすずは、慌ててポリバケツをひっくり返してしまいます。偶然にゴミの中に思いもかけない姉たちの誰かの「秘密」を見つけ、すずは激しく動揺します。
家に逃げ帰るすず。でも不安からは逃げられません。こんな時に限って、姉さんたちはみな帰りが遅くなるとのこと。すずを安心させてくれる相手は誰もいません。
翌朝佳乃に八つ当たりしたり、不安に苛立つすずは、夜勤帰りの幸のやさしい気遣いを嬉しく思いながらも、どんなに信頼している大人にも話せないことがあると改めて感じます。
すずが一人悩む描写に、仕事中のチカのいつもとどこか違う様子、ネパールからのテレビ電話、アフロを切って別人のような店長がこれでもかとかぶさってきます。
サッカーの練習中雷が鳴り、どんなに忘れようとしても拭えない不安がすずを追ってきます。一気に降り出した雨に打たれるすずの様子がおかしいことに風太が気付き、二人は自然に相合傘で歩きながら、話し合います。
(風太には一番言えないことだけど)今、不安に思うことがあって、お姉ちゃんたちに関することだから、まずそっちと話してみて、
「それから、話せることは風太に話す」
風太がいるから、すずは勇気が出せるんですね。
そのまま厄除けのお参りに向かった二人は、雑踏にチカの姿を認め、幸の時にそうして秘密を知ってしまったように、チカの後をつけます。
安産祈願の大巧寺の中に入って行くチカの後ろ姿に、姉の秘密とすずの不安が、もう疑いの余地もなく立ちふさがります。
あの日ゴミの中ですずが見つけたのは、妊娠検査薬だったのでした。

どこか遠くで鳴っている雷、近付いて来なければ、雨が降り出さなければ、すずには関係のないことですが、そうかといって雷はどこかで発生しているので、漠然とした不安に悩まされるのです。
チカの様子がおかしいのは、アフロ店長に危険なことが起きるフラグだとばかり思い込んでいたので、まさかの展開にびっくりです。今回ネタバレ感想を書いていて、構成と比喩の巧みさに痺れました。
季刊ペースの連載なので、次回は4月号……´д` ;2月28日頃発売なので、皆様しっかりメモしましょう!_φ( ̄ー ̄ )

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