続きです。①はこちら。
「とりかえ・ばや」episode.49 熱(ほとほる)
(余談ですが、35ページ中①に書いたところまでが18ページで大体半分です。毎月毎月ちゃんと前半と後半にそれぞれ見せ場(と萌え)が用意されているんですよね。プロの構成力ってすごいなーと毎回感心してしまいます!)
尚侍が一大事の報を受けて承香殿に駆けつけた主上、沙羅の容体についてーーずばり子は?とたずねますが、腕をひねり怪我で発熱しており、
「子はーーおられぬご様子……」との答えに、すぐさま人払いを命じます。
床につき熱で朦朧としている沙羅と二人きりになった主上。視線を感じて目を開けた沙羅に、いいから横になっていなさい、と静かに言って傍らに座ります。
額に当てた布で少しでも顔を隠そうとしながら、こんな姿を見られるのが恥ずかしい……と沙羅は思っています。
そんな沙羅を見て、上様は苦しげに口を開きます。
私は以前そなたに言った、他の男との縁組は許さぬと。その言葉に縛られて、深い仲の相手がいることを公に出来ぬまま、おなかの子が…気の毒なことになってしまった。あの言葉は忘れていい。子を産めぬと私に嘘を付いてまで、「その男」に操を立てようとしたそなたを責めるつもりはない。今は身体を大事にするがよい。
沙羅と目を合わせようともせず、一方的に語りその場を立ち去ろうとする上様。話の内容はいつもの聡明で公平な上様なのに、感情までは制御しきれないところがもう、嫉妬に燃える上様素敵……!
あの言葉、あの時どうしようもなく心がときめいた、とうっとりと思い返していた沙羅、思わぬ上様の反応に、熱をおして起き上がります。
「懐妊は単なる噂です!私から流しました!」
驚いて振り返ってしまう上様、必死の面持ちの沙羅を見て、混乱したままばさっと衣の扱いも無造作にもう一度座り込みます。
「考えていることがわからぬ!なにゆえに?」
デスヨネー。いくら惚れ抜いて掌中の珠のように大切にしている相手でも、どれが嘘でなにが真実なのかわかんないんじゃ、もっと怒ってもいいですよ。
銀覚を嵌めるためです、敵を欺くにはまず味方から!上様の御子を懐妊したと聞けば必ず何か仕掛けてくると思い噂を流しました。
何を馬鹿な!囮になるなど危なすぎる!確かに私もそなたを寵愛していることを軽々しくひけらかしたのは悪かったがーー。
「恐れて待つだけは性に合いませぬ!」
熱で頭がおぼろげになるのを感じながら、沙羅は言い募ります。
甲斐あって証拠の御供米を手に入れることが出来たのに、こんな最悪の結果になってしまい、己の愚かさが悔しゅうございます。もっと慎重にことを運んでさえいれば……、熱に浮かされながら悔し涙を浮かべ、息遣いも荒く今にも倒れそうな沙羅を怖い顔で見つめていた上様、両手で沙羅を抱きとめると、すっぽりと腕の中におさまった沙羅の頭にそっと頬をうずめます。
「そなたがなぜそこまで勇ましいのか不思議でならぬ」
それは上様をお守りしたいから、ただそれだけです。二人が至近距離で見つめ合うこの場面、几帳越しなのが素敵すぎる……!沙羅の二の腕を掴む上様の手にめっちゃ力入ってます、涙目で愛を告白されて上様の気持ちは最高潮に盛り上がってしまったのでしょうか?たぎってますね〜!o(≧▽≦)o
あの…熱が出てまいりました…と弱々しく逃げを打つ沙羅にも全く動じることなく、
「ゆっくり……横に」
と沙羅の戸惑いもなんのその、結局押し倒しちゃいました。
「…いっそ今ここで噂をまことにしてしまうという手もある」
沙羅の手に自分の手を重ね、恐ろしいくらいの真剣さで、表情に甘さがないのが主上の余裕のなさを表していて、やばすぎる!男の色気全開です!肩を床に押し付けられて逃げることも出来ずに、男の顔で見下ろされてどうする沙羅⁈
「でも…私は女御にふさわしくないの…です」
理性というより乙女の純潔さで主上の熱情を退けました。
そしてこちらも鉄の理性を持つ宮中一の紳士、
「そうだったな。熱がひどいようだ」
と引いてくれました。いつもえらいな〜。この時接吻の距離なのに、こつんと額を合わせるだけなのが最高!二人の表情から伺える温度差がたまらない!
今回のように尚侍から仕掛けなくても、そなたを狙う者は他にも現れるだろう、
「ならば、そなたを私から離さぬようにしよう」
いつものように甘い言葉をかけられて、頬を染める沙羅。
「誰か水を」
主上の言いつけに、次の間に控えていた十良子がもう一人の女房と一緒に水を持ってきます。二人がそのまま控えているのを確認して、自分が水を含んだ主上は、横たわったまま苦しげに息をする沙羅の頭の下に手を回し、ゆっくりと覆いかぶさると口移しに水を飲ませます。
美しくも妖しいその光景に圧倒され、白目をむいて倒れる女房を助けて退散する十良子。これで首尾よく、子の有無に拘わらず主上の寵愛に変化は微塵もないとの噂が駆け巡ることでしょう。
これで本当に二人きりになり、主上は沙羅に本心を打ち明けます。
そなたが子を産めぬ身であってもーー本来ありえないことだと誰よりも私自身がわかっているがーー女御に迎えたい。二人なら強く生きて行ける……。
一人の男としての心情を吐露した主上、返事は?と伺うと、沙羅は安心しきったように眠りについていました。
「眠っている」
拍子抜けの主上。しばし沙羅の寝顔を見つめています。……
そして舞台は霊林寺へと。
御供米を取り返してまいりましたと銀覚に訴えるのは、承香殿で沙羅に仕えていた伊予命婦でした!沙羅の湯浴みを手伝わせるほど十良子の信頼も厚かったというのに、その正体は銀覚の手先だったのです。
「確かに突き落としたのだな?」
「はい!」
「御子は流れたのか?」
「わかりませぬ……」
あいわかった、お前には家を与える、すぐに身を隠せ。
「それだけですか?尚侍さまを裏切ってこんなに危ないことをやったのに……」
他に何か土産があれば別だ。見聞きした中にもっと有益な情報はないか?
そう言われて考え込んだ命婦は、前半で伏線として出ていた尚侍の肩の傷跡のことを持ち出します。
お姫様なのに不思議なことと思いました。弓矢が刺さったような深い傷跡でございました。
「『弓矢』?」
その言葉に銀覚が食い付いたところで、終わりです!
いや〜私がたぎっちゃってましたね!wお恥ずかしい。こんな神展開が来て、後まだ何かある?と思いますが、そういえば鞍馬山に決戦?に出かけた睡蓮が出てこなかったー!まだまだお楽しみが続きます。①で色々文句を言いましたが、②ですっかり満足な私なのでした。