保存大事。(「母よ嘆くなかれ」/「マスターキートン」)

  • 2017年10月31日
  • 2018年8月18日
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[amazonjs asin=”4588682202″ locale=”JP” title=”母よ嘆くなかれ 〈新訳版〉”] パール・バックの「母よ嘆くなかれ[新訳版]」を読んでいたく感動したので久々にシミルボンに投稿しようと思い書き上げて投稿ボタンを押して、何を間違ったのか全部消えてしまった……_:(´ཀ`」 ∠):
初歩の初歩ミス!保存してない自分が悪い! というわけで、とてもいい本でした……。
文章がきれいで、誰にでもよくわかるようにと心を砕いて書かれたものであることが伝わってきます! もちろん翻訳ですがそれもまた細部まで注意してなされたものなので十分でした。
いろんな人が書評で引用されている第1章のお医者様の言葉が、パール・バックの反応も含めてとても心を打つのです。
娘の発達遅滞の原因を突き止めようと、お金がなくなれば借金をしてまで世界中をドクターショッピングして回っている「わたし」の旅はミネソタの病院で終わりを遂げます。
「奥さん、このお嬢さんは決して治りません。空頼みはおやめになることです。あなたが望みを捨て、真実を受け入れるのが最善なのです。でなければ、あなたは生命をすりへらし、家族のお金を使い果たしてしまうでしょう。お嬢さんは決してよくならないのです。……
この子どもさんは、あなたの全生涯を通し、あなたの重荷になるはずです。その負担に耐える準備をなさってください。……奥さん、準備をなさってください。とくに、お嬢さんにあなたのすべてを吸い取ってしまうようなことをさせてはなりません。お嬢さんが幸福に暮らせるところを探してください。そしてそこに子どもさんを託して、あなたはあなたの生活をなさってください。わたしはあなたのために本当のことを申し上げているのです。」
人生には避けることの出来ない真実があります。周りの人はみんな知っていてでも誰もはっきりとは言ってくれなかったこと。辛い気持ちで、勇気を持ってその医師は言ってくれたのです。
その真実の瞬間、その時の衝撃、心が絶望して血を流しているのに、世界は静かで何一つ変わらない。娘も変わらない。娘への愛情も。
固有名詞を出来るだけ排した淡々とした文章で、80年以上前のことが昨日起きたことのように感じられて胸に迫ります。
そしてついに娘のありのままの姿を受け入れた時のエピソードには涙が溢れて止まりません。この種の後悔は親なら誰にでもあることだと思います。子どもが親への無条件の愛情と信頼から無理をしていることに気づくということが。
アメリカ人でありながら、長く中国に滞在していたパール・バック。若くて夢にあふれ、生まれる前から自分の子どもを深く愛していました。
「最も美しい季節は春でした。小麦の淡い緑のうえに蜃気楼が見えるからでした。わたしの家の近くには湖も山もなかったのですが、蜃気楼が湖や山を運んで来てくれました。水平線上に夢の風景のように見える湖や山は、まさに本物以外のなにものでもないように思えたものでした。」
夢は実際の人生以上に美しいものですが、ひとりの人間が苦しみ抜いてそれでも逃げずに希望を見つけていく過程もまた、美しいものです。
そしてパール・バックの評伝を読み、この本に書かれていない事柄を知ると、人間というのはとても複雑で不思議なものだけれど、行動する、決断するって大事なことなんだなと改めて思いました。

「マスターキートン」
うろ覚えですが、父親を亡くした小さい女の子と知り合いになったキートン氏。母親が再婚するのではないかという不安と不満を持ち、たとえ死んでも愛することをやめてはいけないわよね、と嘆く少女に、
「一人の人間が自分以外の人のために 人生の幸せの何分の一かでも 犠牲にすることは 大変なことなんだ。たとえ 親と子でも…」
と告げます。キートン氏も家族といる時間より仕事(研究?)を選んで暮らしているわけですが……。
その大変なことを選ぶか選ばないか。選べるだけ幸運なのか。どちらにせよ、決めるのは自分自身でありたいものです。
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