とりあえず先にこちらから感想です。久々登場の主上はやっぱり情熱的!以下ネタバレしてます。
とりかえ・ばや episode44 花の決意
表紙は南天を手にした東宮様。でも凛とした可愛らしいお姿を見られるのは今回ここだけ……大きな転機が訪れた回でした。
客人である人妻が他所のお屋敷内を供も連れず歩き回っている時点でないない!と言われればそれまでなのですが、こちらも有り得ないお転婆をしているところを四の姫に見られた沙羅。
「……背の君」
四の姫の口から出た言葉に動転して、足を滑らせます。とっさに抱きついてそれを支える四の姫。はずみで折れてしまった桜の枝で顔を隠す沙羅ですが、四の姫は頭を下げると「睡蓮さま」と言い改めました。ばれてません。
左大臣家の宴に招待されたのは睡蓮の進言によるものと聞いて、一言お礼をとこんな奥まで来てしまったと四の姫は言います。こんなことを言えた義理ではないのは重々承知しているが、どうか兄上様にも一言だけ、あなた様の広い御心のおかげで幸せだとお伝えくださいーーと。
では権中納言は改心しましたの?と無礼なまでに率直に尋ねてしまい、沙羅は謝りますが……
「少々目を覚ましたようでございます」と四の姫は微笑を浮かべます。
人は改心したと口では言っても、すぐに変わるものではありませんよね。また変わらない……とも言えないところが、目が離せなくて面白いのかも知れません。あの人は自分の気持ちに素直なところが長所であり欠点でもありますから。
「表と裏であって実は同じもの。四の姫さまは懐が深いのですね」
相手を責めるばかりでは、何も事態は好転しないものですから、まず良いところを受け入れていこうと思いました。
よいお考えです。……などと女子トークする二人が……可愛いい!桜を背景に見たこともないくらい明るい笑顔で、なにこの人たち、きらきらしてる!
四の姫さま、大人になられた。三年前に二人並んで桜を見た日が夢のよう……。
強い風が花を散らし、明るく笑い合う二人の上に雪のように舞い散ります。
「花のように幸せだった頃を思い出す」
曇りのない笑顔で四の姫が漏らした言葉は、眩い光とともに胸に突き刺さり、沙羅はとめどなく涙を零します。
「どうされました?」
「花びらが目に…」
「どれ?」
本来は嫂だったはずの方が、やさしく沙羅の顔を覗き込みます。
偽りの幸せを、美しい記憶として心の隅に残してくれている優しい人に、沙羅は心の中で謝ります。
そんな風に言ってもらう資格などない。あなたの一番の不運は私と夫婦になったことなのにーー泣きぬれる沙羅の頬をそっと四の姫は袖で拭います。
大したことではありませんよ、もう大丈夫、と。
恐らく二度と顔を見ることはないであろう四の姫に、沙羅は桜の枝を贈ります。どうか今度こそ本当に幸せになって……。
幸せとは自分の手で掴むもの。四の姫、鮮やかに微笑んで退場です。
時は移り、菖蒲(端午)の節句。五節会の一つで、菖蒲の強い香りを持って厄払いと健康を祈る行事です。
宮中も華やかに賑わう中、東宮は病に伏せっているのですが、一番の問題は「また」「いつものこと」と殿上人たちに東宮を顧みない空気が蔓延していることです。笑いの種にして、不敬を諌める者もいない様子に眉をひそめる主上ですが、女房たちまでが追従して東宮を軽んじている始末です。
そこへ朱雀院のお渡りがあり、内々に話があると……。
東宮をこちらへ戻したことは間違いであった。元々健やかな娘なのに、ここのところの病い続き、東宮は重圧に疲弊している。
それに加えて、沙羅双樹の右大将の件。ーー何もないのは分かっている。しかし人を恋うる気持ちは抑えるほどにより強くなるものだ、それがいつまでも続くとなれば、見ている方が辛いのだ。
元々はあなたに男皇子が誕生するまでの繋ぎとして、一番波風の立たない道を選んだつもりが、思いがけぬ重圧で、娘は押し潰されようとしているーー
女東宮を廃位させよ、どうせこのままでは堂々巡りを繰り返すだけ、いっそ違う流れに飛び込んでみては?というのが、院の話の主旨でした。
「新しい女御を迎える気はないのか?」
五人目の女御を?ずばりと切り込まれてとっさにそう返した主上、睡蓮の尚侍にご執心のこと聞いてますぞと院はどこまでも核心に触れてきます。
申し分のない姫ではないですかと言われて、顔を赤らめる主上。
「どうしたらよいかわからない、目をそむけて知らん顔をするあの人の、紅に染まった頬を見ると」とお歌を呟く主上に、院まで一緒になって照れてます。なんと少年のようではないかと。
本人が嫌がることを無理強い出来ません。怖がりやで可憐な人なんですよ。
またそんな。もうちょっと押してみればきっと想いが届きますよ!応援するから!みたいなことを言い合う兄弟、おもしろ可愛すぎる!萌え!
しかし以前に沙羅が吐いたもう一つの嘘……「薬師に子が生めぬ体と告げられました」このことを尚侍は気に病んでいるのだろう……と考えて、表情を曇らせる主上です。
では別の方では?五節の尚侍も気立てのよい娘ですね。
当然のように用意されている別の選択肢ーー帝だといって、自分のために生きるのではない、国の存続のために生きている身だ、そう何度自分に是非を問うてもーー女御として迎えたいのは、睡蓮の尚侍ただ一人なのです。
「申し訳なく思います」と頭を下げる主上に、生真面目だのう、と院は仰いますが……。
問題はそこではなく、男皇子を授かるまで何人でも女御を迎えるというのでは、他の方たちも不幸だ。無用な争いが生まれることもあるでしょう。誰も幸福にならない。
東宮と直接お話をして決めましょう。……
主上の考え深いところ、優しいところ、兄弟の深い情愛など、今回しんみりするところ、泣き所がいっぱいです。逆光の使い方が美しいです。
そして主上は梨壺を訪れます。
今までのあなたの艱難辛苦、よくぞ耐えてくれたと、私も院も心から感謝している。もうこれ以上そなたを犠牲にしたくないのだ、わかってくれ。
努めて冷静に話す主上に、東宮は一瞬感情を爆発させます。
「犠牲などと私はっ……」
思っておりませぬ、そう言葉を返すことが出来ず、むせび泣く東宮。自分がどう思っていたとしても、今の状態でお役目を果たしていると言えるか?主上が誇れる東宮であると胸を張って言えるのか?
「東宮?」
御簾越しに声をかけられて、東宮は自ら涙を拭います。
自分が情けないと泣くだけでは、それこそただの小娘ではないか。自らを鼓舞して、東宮は居住まいを正します。
自分なりに心を砕いて東宮の役目を努めてきたことを告げると、主上も答えます。あなたは最上の東宮であったと。
今の状態は私も本意ではない、上様の判断に従います。
最後まで威厳を持って東宮は今度の決断を受け入れました。五節の尚侍を筆頭に女房たちは言葉もなく涙を流すのみ……。
「新たに東宮を立てよ。男を。東宮に適任な皇子を選ばねばならぬ」
そう帝が宣言して、一体誰に?……で続く。
えーっ!そんなちょうどいい男子がいるの?いないから揉めてたんでしょ?!これからどんだけ揉めまくるの?てゆーか主上、なんでそんなに沙羅大好きなの?可愛いの?
主上がこれだけ沙羅のことや政治のことで頭を悩ませ、辛い決断をしと孤軍奮闘してるんだから、沙羅にももうちょっと頑張ってほしいなー。と思いました。
一日中とりかえ・ばや読んだらさすがに疲れました。今月は泣けたー!!