「逃げるは恥だが役に立つ」41話 Kiss 2016年12月号 感想

「逃げるは恥だが役に立つ」41話 Kiss 2016年12月号 感想


Kiss12月号は「逃げ恥」が表紙でした。……このカラーは正直、塗りが微妙だなと思います。すみません。
本編もセンターカラー。こちらは頬杖を付く百合ちゃんが美しい、素敵なカラー扉。「ドラマも絶好調!こちらはクライマックス!!」というアオリ通りの内容でした。
以下ネタバレありの感想です。
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「逃げるは恥だが役に立つ」第41話[柳に風]

三角ビルの恋愛マスター「桜庭先輩」が後輩の椿さんをお供に、風見さんの同僚と合コンのセッティングをしているという安定のオープニング。
風見さんと言えば、例の年上女性とはどうなってるのかしら。うんと年下の男性と友情を持つってちょっと憧れてたんだけど……という話に乱入してきたのは五十嵐さん。
「わっ五十嵐安菜!」
初対面なのに私の名前知ってる!事情通!そのお話詳しく聞かせて!と突撃して、桜庭先輩をイラつかせてます。

一方平匡さんは会社で、沼田さんに相談を持ちかけられます。夜時間とってもらえる?と話していると、まさにその相談事の大清水さんが通りかかります。
この間はすみません……と赤い顔で言い出して、どうにも何とも二人とも満更でないといったいい雰囲気。ちょっと天然な大清水さんに、ドキドキさせられて心臓が持たないよ〜と、もう相談することなんかあんの?というくらい出来上がっちゃってます。
こういうことに鈍い平匡さんは、何が何だかわからない内に飲みの約束をさせられました。どうも沼田さんは「社内恋愛の先輩」である平匡さんwに色々教えてもらいたい模様。
「まだやっちゃっただけで付き合ってるとかではなく」とか言ってる沼田さんですが、平匡さんに聞きたいことは、「社内恋愛からの女性との偽装結婚…そして今風見くんと同棲」。ああ……それを参考にしたいんですねw沼田さん。
なんで恋愛・対人スキル底辺の僕に相談?と疑問だった平匡さん、この壮大な誤解に固まってます。結局全部説明するはめになりました。
深夜帰宅すると、みくりは先に就寝中。ベッドに入る時に起こしてしまって、謝る平匡さん。朝になれば先に起きるみくりが謝りながらベッドから出ます。
時間のすれ違いといってもちょっとのことなんですが、毎日続けばそれがストレスに。昨日の帰りに卵を買い忘れて、朝食が思うように整わない。昨日も買い物行ったのに今日も行かなきゃ。買い物に時間を取られてからの夕飯作り。……
「自分が工夫(努力)すれば改善出来るはず」これが積み重なると大きなストレスで、家庭が安らぎの場じゃなく自責の修行場になってしまうので要注意!特に完璧主義の方が陥りやすい罠みたいなもの。
(あとなんかスキンシップも減ったなあ)新生活一ヵ月目の二人の共通認識がこれ。あるあるな悩みに二人はどんな解決法を見出すのか楽しみです。

そして後半は影の主人公、百合ちゃんに降りかかるカタストロフィーとなるのか、五十嵐さんとの直接対決です!
ランチのために降りてきた百合ちゃんに、待ち受けていた五十嵐さんが声をかけます。当然初対面。
「風見さんに聞いてちょとお話したくて」と、言葉遣いは丁寧ですがかなり強引にランチに誘います。
「風見さんが恋に落ちた相手って、土屋さんですか?」
……ふーん、極めてプライベートなことを喋ってる相手なんだ。この若くて強引で根拠のない自信に溢れた「女の子」が。それとも誰にでもべらべら喋れる程度の出来事だった、ってわけ?思い返すたびに生涯心温まるような、人生の最も美しい輝きだと思ったのは私だけ?……その程度の男だった、ってわけ?
と、相手の意欲を削ぐ見事な先制攻撃!
「風見さんと、そういう話をする仲……の同僚でーす」
頬杖をついて冷めた目の百合ちゃんに、五十嵐さんが一方的に持論を展開します。
ずいぶんな年の差ですよね?
あなたはお綺麗だから、単なる友情にしては色気ありすぎだし、かといって恋人っていうには無理があるし。
「いい年の大人が若い子を相手にするって結局、若さに執着しているだけですよね。それって男女問わず大人としてちょっとみっともないと思うんです、私」
若くて可愛ければ結局誰でもいいっていう享楽的な関係。失われていく若さを貪るように相手を利用していい気持ちになるなんて下品で醜悪。
「若い男の子を囲うのはさぞや楽しいんだろうなーと思いますけど、でもそれってあなたが彼の若さをただ消費しているだけじゃないですかね」
男の子って歳か!(27歳)ほんとに嫌味な口調が上手いな五十嵐安菜ちゃん。
百合ちゃんも反論。
「彼の若さに対して負担に思うことはあっても、それが目的になったことはないわよ」
彼が若いから付き合ってるんじゃない、風見さんだから友達になれたの。若さじゃなく本質を見ているつもり。
その上で告白されたけど断った。それだけの関係よ。
あなたは何か勘違いしてるんじゃない?
「私がいなかったら、彼があなたと付き合うと思ってるの?」
今あなたたちは付き合えてない、それが全ての答えなんじゃないの?彼を自分の思い通りに、いいように出来ると思い上がってるのはあなたの方じゃない?
「でも少なくとも障害は一つ減るんじゃないですかね」
「『障害』ね……」
(めっちゃ失礼なこと言ってますが、天然とか性格ではなく、多分ディベートのテクニックなんでしょうね。)
あなたはずい分若さにこだわってるのね、歳をとることは害悪でしかないの?と水を向けられた五十嵐さんの反論がすごい。
「純然たる事実なので。アンチエイジングにお金を出しても老化にお金を出しますか?若さというのは価値の一つだと思うんです」
価値。犠牲を払ってでも手に入れたいと思うもの。
ここで百合ちゃんが出してくれた答え、スカッとしましたね!この討論のために今までの物語があったの?という最高のカタルシスでした!
あなたが価値がないと切り捨てた「老化」しか未来にはないのに、絶望に向かって生きていくつもり?
「自分が馬鹿にしていたものに自分がなるのはつらいわよ」
普通の人は考えを修正しながら人生に折り合いをつけていくわけですが。
自分の価値がすり減っていると自分で思いながら、他人の目にどう映るかだけを気にして生きるなんて辛いことだし、それこそ意味のないことです。
もっと周りに目を向けて、他人の価値観を否定せず、肩の力を抜いた方がいいわよ。
自分に自分で呪いをかけているようなもの。
五十嵐さんに笑いかけながら、それこそが今までの自分だったーーと感慨深い百合ちゃんなのでした。
百合ちゃんの言葉に反論を封じ込められた五十嵐さん、彼女の考えが変わるかどうかは不明ですが、店を出てからもう一度たずねます。
「結局、土屋さんは今、風見さんのことどう思ってるんですか」
「大好きよ。あなたもそうなんでしょ?」
と微笑みます。
ここ大好きよ、だけで終わってもいいのに、あなたもでしょ?で五十嵐さんを救済しているんですね。五十嵐さんが決して合理的なだけの人間じゃなくて、恋に我を失なって、理屈に合わないみっともないこともしてしまう、百合ちゃんや風見さんと同じなんだってこと。

深い話をコメディタッチに描くことで、間口が広がって「本当にこの物語を必要としている人」にも届きやすくなっているのがもう、すごいです。面白かった!「逃げ恥」は海野先生の硬質な絵柄で問題提起の生々しさが薄まって、見事な相乗効果を発揮しましたね!正に代表作と呼べる作品です。

2017年1月号はこちら

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