「逃げるは恥だが役に立つ」38話 Kiss 2016年9月号 感想

毎度のことですが、メディア化(テレビ)の影響ってすごいですね。「海街diary」の映画のテレビ初放映の時、「甘々と稲妻」の魔法のカレーの回がアニメでテレビ放送された時、そして現在はもちろん「逃げ恥」!ドラマが大好評なようで、素晴らしいことです(^^)
社会の一員として自立することと、自分が納得できる愛の関係性を模索する、大人のためのちょっと洗練されたおとぎ話。登場人物の誰の立場に立つかによっても受け取り方が違ってくる、深みのある佳品です。このままいい終わり方をしてくれるといいなあと思います!
以下ネタバレありの感想です。
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「逃げるは恥だが役に立つ」第38話[一場の春夢]

第38話は、前回までの風見さんの百合ちゃんに対する恋の告白を下敷きに、風見さんの内心が明かされる独白形式でした。
「理解できそうで理解できない。風見さんのパーソナリティ(人格)形成に迫る!」という煽りが表紙に入ってます。表紙絵は落ちた赤い椿の花。何か意味があるのかな?花言葉かな?「誇り」「私は常にあなたを愛します」……。

自宅マンションで一人目覚める風見さん。
(29年目の朝だ)
休日のようです。細々した用事を済ませながら、風見さんの回想が入ります。
ーー小学2年生の時、両親の離婚により母の実家に住むことに。そこには祖母・叔母がいて、女3人の中に男は風見さん1人。
女3人寄ると定石通りかしましく、日々噂話に花を咲かせ、しかも身内の遠慮のなさで辛口・毒舌とあっては情操教育に悪いことこの上なし。
おかげで「女性に対し大きな夢も見ず、適度なあしらい方を覚えて」育ってしまった風見さん。しかも美少年で家庭内でちやほやされるという最悪のパターンですねw
「母の妹でアラサーの薫ちゃん」の男性との付き合い方からも、男女は愛によって結び付けられるだけでなく、歪んだ自我の自己実現というややこしい心の闇があることを学んだり、しかもそれは誰が持っている感情だと知ったり。(自分よりランク?が上の相手と付き合って、羨ましがられたい、自慢したい、と)
そんな家庭環境の中、中2にして初彼女。「ひとつ年上の線の細いおとなしいひと」。自分の周りにいないタイプの繊細な女の子で年上ということもあり、風見さんの女性遍歴の中で最も純粋に子どもなりに色々頑張ってみたそうです。
ところが3ヶ月もたたない内に、彼女の方から言われます、「私とあなたは釣り合わない」と。みんなに「なんであの二人がって」言われてしんどいの。自分に自信が持てなくて不安で自己嫌悪するのが苦しいの。
賢い風見さんはこんな時、どうすればいいのかよくわかっていました。
「今のままのあなたが好きです」と相手を肯定して受け入れれば良いのです。
ーーでも、中2の風見さんは醒めてしまったのです。女性に対して大きな夢は持っていなかったはずなのに、真実の愛なんて求めていないつもりだったのに、何かが壊れて傷ついてしまったんです。
自分に自信が持てない、持てるように変わる気もない、自分自身の問題を僕に押し付けないで。自分の気持ちと、他人の目しか気にしてない、恋愛は相手があることなのに相手の気持ちは考えようともしない、……イケメンと付き合って優越感に浸りながら、彼を「バカで甲斐性なし」と罵る薫ちゃんと「真逆のようでいて 実は」同じだーーこのひとは違うと夢見た分、完全に女性に失望してしまった風見さん。どうしても許せなくて、結局自分から別れました。
それからは彼女が途切れたことはないと!
ところが、多分向こうから告白されて気が向けば付き合うパターンのためか、歴代彼女とはみんな大体似たような末路をたどることに。
最初は相手が何でもにこにこ合わせて来て、水面下で不満をためていて、それが爆発して気持ちを試すようなことをしてきて、風見さんが冷めてしまう、と……。
(なんかまともな恋愛してないんじゃないか……)とスーパーで買い出し中にちょっと落ち込みます。
それで年齢的にも結婚圧力がかかるしで、ここ一年は彼女を作ることを拒否していたわけです。……なんかもっと深い意味があって非婚主義なのかと思ったら、案外フツーでしたね。結婚したいと思えるような女性がいないんだよっていう。それだけ。
ここで現在に戻って来て、このスーパーで百合ちゃんとバッタリ。ご近所さんだから……。

「今日は祝日ですもんね。2月11日」
「そうね」

当たり障りのない会話を交わす二人。
ところが風見さんの胸の内は燃えています。
ーーあなたにとっては、年に何度もある祝日の一つに過ぎなくても、僕にとってはこの日に逢えた偶然が運命のように感じられるーー(嬉しい)
赤い椿には西洋独自の花言葉というのがあって、「あなたは私の胸の中で、炎のように輝く」「我が運命は君の掌中にあり」おお、ロマンチック!
そんな風見さんの想いを知ってか知らずか、百合ちゃんの方から時間があったら少し話さない?という提案が。
少年のように心震わせ、頬を上気させる風見さんが百合ちゃんのお宅にうかがうと……。
「ごめんなさい」
いきなり死刑判決出ました。
ーーあなたのこと最初は苦手だったのに、いつのまにか心を許してて、こんな年の離れたボーイフレンドができるなんて、年取るのも悪くないって思ってた。女性として見られてるって聞いて動揺したけど、本当に嬉しかった。もうちょっとだけ年が近かったらって。
「このときめきを丸い結晶に閉じ込めて、心の奥にしまい込んで、時々眺めてニヤニヤするわね」
はは……と笑うしかない風見さんです。
一生大事にして?
もちろんよ。
(ああ、軽やかに振るなあ)百合ちゃんに合わせて、穏やかに微笑する風見さんが切ないです。
最後にハグ。一度だけ。
(この気持ちを結晶にして閉じ込めよう)一生に一度の本当の恋の記念に。

……百合ちゃんと中2の時の彼女との違いがよく分からない。今回は「釣り合いが取れてないから」ダメになったのと違うの?障害をはねのける自信がないということじゃないの?自分の気持ちと人目だけが気になって、相手の真心を無視したことにはならないの?
でも風見さんの方の気持ちが違って、自分でもどうしようもなく百合ちゃんを好きだってことはわかるんだけど……。
自宅に戻り、ベランダから夕暮れの街を眺める風見さんのスマホに、五十嵐さんから着信が……。
誕生日の夜をひとりで惨めに過ごしたくないとの思いから、風見さんは電話に出てしまうのでした。

あ、誕生日だったんだ!と叙述トリック(ではない)に見事に引っかかってしまいましたよ。誕生日にフラれる風見さんカワイソス。まさか五十嵐さんと衝撃の展開来るのか?
いや〜風見さんはほんとに百合ちゃんラブだね〜(*´∇`*)

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