※こちらは後半です。
以下ネタバレしてますのでご注意下さい。
「とりかえ・ばや」episode47.乱の気配
内裏の北東にある淑景舎(桐壺)。帝の住まう清涼殿から最も遠く不便なこちらの淑景北舎にて沙羅と弓弦親王が初顔合わせ。
睡蓮の尚侍さまに教えをこいなさい、と几帳の向こう側の式部卿の宮が言い、素直に頭を下げてお願いする弓弦親王。
この方は都のことは何も知らずに育ってますので、
「なにとぞよしなに」
「しかと」
直接声をかけられて、宮に入れ代わりがばれぬよう用心せねば、と気を引き締める沙羅でした。
しかもこの場所は、思い出すのもおぞましい、石蕗に襲われたーーあの時宿った子は男の童であったのだ、もうこの世にはおらぬ……恐怖と後悔の記憶が蘇り、遠い目をして黙り込んでいた沙羅に、弓弦親王が心配そうに声をかけます。
尚侍さま、青ざめていらっしゃる、休まれた方が良いのでは?
まだ少年だからか結構近くで話してますね。近親の方を亡くされているせいか、親身になって心配してしてくれて、尚侍の曹司までお送りします!と男の子らしく先に立って歩き出す親王に、「おそれいります…」と沙羅も笑ってしまっています。
しかし不慣れな内裏で間違って清涼殿の方に行こうとして、引き止める沙羅と何やかやと話している姿をたまたま目に留められた主上も自然に笑顔に。
……何か、いいですね!まさに一服の清涼剤といった感じで。この組み合わせ、なんだか微笑ましくて意外といい!
沙羅の住まう承香殿に着いて、もう気分は良くなったのでここで続きをいたしましょうと、親王を招き入れます。
宮中では音楽は欠かせません、横笛はどうですか?と勧めます。
はいと素直に笛を手にした弓弦親王、ピィーイィとなんともひどい音しか出せず、今話題の方の訪れに、御簾越しに様子を伺っていた女房たちは呆れ返ります。
それでも一生懸命な弓弦親王、はあはあと息を切らすまで頑張りますが、不得手なのは本人も自覚しています。
女房たちが感心するほど、我慢強く終始笑顔で弓弦親王を見守る沙羅、
「箏なら得手なのですが。母さまが忘れ形見に残しましたのでよく弾きました」
と、こちらもまだあどけない笑顔で言われて、この方は父母がおられぬのか……と胸を打たれます。
これから横笛を練習いたします。くさらずにそう宣言する弓弦親王は、上様の言の通り素直に学ぶという大切な資質を持っていました。
「……このように吹くのですよ」
ややが生きていてくれたら、母上が琴を教えてくれたように、こんな風に横笛を教えたかも知れないーー哀切で澄み切った音色を沙羅が奏でると、女房たちも聞き惚れて顔を出します。
「尚侍さまは…横笛の名手なのですね」と、弓弦親王も頬を染めて感嘆します。
夢中になって女房たちがざわめくのに気付かない沙羅、先に気付いた弓弦親王が、上さま…と深く頭を下げました。なんと御簾の向こう側に上様が!
「懐かしい沙羅双樹の右大将の音色ぞ」
つい我を忘れて没頭してしまったことに慌てる沙羅、よく合奏や教え合いをしましたので……と取り繕います。
いけない、気を付けねば、でもうれしい……!と複雑な感情が交錯してうつむいた沙羅に、上様はそれ以上追求しないどころか、右大将を思い出し悲しませたか、許せ、とお優しい……。
そしてなんと睡蓮は今、芦屋の別荘に蟄居していることが判明しました。沙羅とは文のやりとりがあるとか。
兄君さまが遠くに?兄君はお寂しいでしょう、お気の毒です。
という弓弦親王いい子!可愛い。
お優しい心遣い嬉しく思います。
と返す沙羅も主上の前での振る舞いを教えたり、本当に微笑ましい二人。
上様も微笑を浮かべ、その内右大将を呼び戻すので悲しまないように、と。
姫さまを清涼殿に近い曹司にお移しになったのは、こんな風に気軽にお渡りになるために違いない、とお仕えする姫が時めいている喜びに湧く女房たち。
さて、そんな沙羅に吉野の君から文が届きます。
東宮廃位の噂は本当ですか?と。
主上には口止めされているが、他でもないこの方には隠してはおけぬーーと、沙羅は一連の出来事の詳細を返信します。それを読んだ吉野の君、銀角の名前に激しすぎる反応を見せます。
取り返しがつかぬことが起こる前に動かねば、と右大将(睡蓮)からの文を取り出して、現在の居場所を確認します。
すぐに芦屋を馬で訪れた吉野の君、浜辺にある貴族の別荘を土地の者に尋ねますが、同じ場所に多くの別荘があり特定出来ません。
砂浜近くまで尋ね来た吉野の君、岩の上に立ち背を向けている、半裸の漁夫に供の者が声をかけようとしますが、その者は海に飛び込んでしまいます。
馬を降りた吉野の君は、素手で獲物をとらえた野趣あふれる若者に、自ら声をかけます。
「そこの海人、教えてくれぬか?人を探している」
そう言った吉野の君は、驚いたように途中で言葉を切ります。
眩しい陽光の下、きらめく海を背景に振り返った若者は睡蓮その人!逞しくなった裸の上半身を惜しげもなくさらし、全身に水を滴らせた姿、思いがけぬ邂逅に目を見開いているものの、震える小鳥のようだった昔の面影はなく、健康で胆力のある様子は見違えるよう!
「吉野の君?」
「右大将どの?」
驚きのあまり、波が足を洗っていることにも気付かない吉野の君の元へ、睡蓮が岩を飛んでかけてきます。
すごい!姫やってたとは思えない!逞しくなっちゃってまあ……!
素手で魚取ったの⁈「獲ったどー!」の人はモリ使ってたから、それを超えたね、睡蓮( ´ ▽ ` )ノ東宮さまは深窓のお姫様だからこんな話聞いたら驚いて、とっても面白がってくれそうですね。ゆづるくんはいい子だし、お姉さまぶってる沙羅は可愛いし、睡蓮の変わりっぷりは面白いし、好きならセクハラじゃないでしょ?とばかりに主上はまだまだやってくれそうだし、ああ面白かった!