「とりかえ・ばや」感想② フラワーズ 2017年1月号

①はこちら

「とりかえ・ばや」episode.53 御来光

東宮は険しい山道を一人で登り、先程不思議な光に包まれていた巨木の元へやっとのことで辿り着きます。それは、
「昔ーー霧に迷って睡蓮と辿り着いた神の宿る巨木……」
そしてその後ろには社がありました。
はあはあと息を切らしながら、はやる思いで近付いていく東宮。木の根元につまずいて転んでも気にせず、社の扉を押し開きます。
そこには男が背中を向けて、粗末なむしろに寝ていました。
ゆっくりとした動作で顔がこちらを向きます。ぼんやりと辺りを見つめる目が、驚いたように見ひらかれ、睡蓮が半身を起こします。
扉を開けて入ってきたのが東宮だと、とても信じられない気持ちで。
「睡蓮…」
泣き笑いでそれだけ呟くのが精一杯の東宮に、なぜこんな所に?
「あり得ぬ。死ぬ前の夢…でしょうか?」
と、睡蓮も茫然自失。
東宮は自分から睡蓮の手に触れて、夢ではない、生きていると信じて皆で探しにまいったのじゃ、と状況を説明します。
天のお導きがあり一人でここまで来てしまった。宮はご心配であろう、でもーー
「わしはーーそなたに会えてうれしい。こんなにうれしかったことは生まれて初めてじゃ!」
なんとストレートな……。゚(゚´Д`゚)゚。
睡蓮も感激して思わず涙が。こんな可愛いこと言われてもういっそ抱きしめてしまいたい!と葛藤する睡蓮がかわいいw
怪我はどうなのだ? ずっとここに隠れていたのか? お腹すいてないのか? と何くれと心配してくれる東宮。
崖から落ちた時、幸運にも衣が木の枝に引っかかったので、命だけは助かった。左足を引きずり何とか追っ手を逃れた先に、この見覚えのある社に辿り着きました。
二晩程伏せっていたところ、寺に侵入する際に手伝ってもらった田人が発見してくれ、この寝床とワラを用意してくれて、水と食べ物を毎日差し入れてくれました。おかげでなんとか生き長らえました。
「なんとありがたい」
睡蓮はもう動けそうか? わしが一人で助けを呼んでこようか?
睡蓮のためなら危険もいとわない東宮です。
霧が雨に変わりました。そうでなくてもお一人で山道を行かせるなどできません。雨が止むまで待って、二人で降りて行きましょう!
断固として言う睡蓮の迫力に、東宮も「う…む」と一応納得します。

一方三の姫たちは必死に東宮を探し回っていますが、宮は意外にも落ち着いています。
雨がひどくなってきた。東宮さまも雨宿りをしているだろうから、ここで帰りをお待ちしよう。
そう言って輿を雨が入らぬ崖の窪みに運ばせます。
三の姫をそこに座らせ、甲斐甲斐しく濡れた衣をぬぐいます。
「すっかりぬれてしまったな」って、もう色男すぎて怖い。なんなのこの方。女の衣の袖をハンカチ?で拭いてくれる。そんなことをごく自然にやる男こわい!かっこよすぎて!
「ーーなぜ捜されないのです?」
当然の疑問を口にする三の姫に、宮は確信を持って語ります。
先程の不思議な光、かすかに虹のような、あれは後光だ。阿弥陀如来の御来迎だ。東宮さまの望みは叶ったはず。きっと右大将に巡り会われた。
それが前世の縁だ。お二人の仲は誰にも裂くことが出来ないものなのだ。
だからここで待っていよう。
そなたはここにいなさい。女子が雨で体を冷やしてはならぬ。私は従者どもと酒でも飲んで体を温めるーーそう言って去ろうとした宮を、三の姫が引き止めます。
主のせいで不幸になった者はいない、なんでも一人で背負わなくていい、信頼できる相手を頼ってもいい。宮は三の姫にそう教えてくれました。
誰かの役に立ちたい、必要とされたいとそればかり願っていた三の姫の頑なな心をときほぐしてくれました。
宮様がぬれてしまいます。お嫌でなければここに、屋根の下にいらして下さいませ!
頬を赤く染めながら言い募る三の姫に、「うむ」と短く頷いて宮はそこに留まります。
「雨はいい。心が鎮まってくる」
「はい」
って夫婦か!と言いたくなるくらいしっくりとお似合いの二人なのでした。

「あの時も…二人でここで待っていたな」
降り止まない雨の音を聞きながら、暖をとるためワラにくるまる二人。こちらもお似合いなんだけど、何かかわいいw 面白いw
「わしはもう東宮ではない。廃位した」
「されど私にはいつまでも大切な東宮さまです。他の者たちがそう呼ばなくなったとしても…」
エターナル東宮さま。だって出逢った時からそうだったし、女姿であなたにお仕えしたのも私にとってはかけがえのないきらめく思い出で……と睡蓮が語ってるのに、
「呼ぶなら別の名にせよ」
ときっぱり。
では「南天の君さま」でどうでしょう?
それはあだ名だからダメ。
では「朱雀院の一の姫さま」?
長い。←一言ダメ出し。
恋する二人っぽい会話……。読んでるとムズムズして、顔がにやけてしまう。
えーと、ええと、暗くなってきたので灯りを灯しましょう。
ではわしが!と簡単に話をそらされたぞ、東宮ちゃん。しかも意気込みのわりに火のつけ方をもちろん知らない。
火打ち石? それはどこにあるのじゃ? と無駄にうろうろする東宮がくしゃみをしました。
冷え込んできました。ワラしかありませんが……とワラを持ってきた睡蓮に、怪我人のそなたの方こそ大事にせよ、とそのワラを睡蓮にまぶす東宮。
当然睡蓮はいえいえ東宮さまが!とばさっとワラをお返し。
……キャッキャウフフですよ!お互いにお互いをワラで温めようと、笑いながらばっさばっさとするうちに、ワラだか相手だかもう間近で触れ合っちゃって、じゃれあっちゃって、子どものように声を上げて笑っていたかと思うとはあはあと肩で息をしている東宮の手が、睡蓮の二の腕に触れていて、至近距離で目が合って、そうしたらもう恋しい気持ちは隠せるどころかお互いに筒抜けなわけですよ!
気持ちが通じ合ってたまらず腕の中に東宮を抱きしめた睡蓮に、
「あったかい…」
って幸せそうに言われたらもう、口付けするしかないわけですよ、睡蓮としては。
二人のアップが美しい……!
唇が離れて、涙ぐんでいる東宮が、ずっとこうしていたい、
「あいたくてたまらなかった」
と、これまた泣いている睡蓮の顔に自分の唇を押し当てます。睡蓮の頬や髪を愛おしそうに撫でながら。
「私もです…! こんな日が来るとは思わなかった」
細心の注意を払って東宮を床に横たえて、抱きしめ合う二人の足がなんとも色っぽい。
東宮さまと切なげに呼ばれて、下から手を伸ばして落ちてくる睡蓮の髪をかきあげながら、東宮は微笑みます。
わしは東宮ではないのだ…ただの睡蓮を恋うる女子。まことの名は光子(みつこ)。
「光子さま。わたしのまことの名は月光です。まるでこうなる定めだったかのよう……」
睡蓮の情熱的な愛の囁きが御神木にかぶさります……。こんな場面でもやっぱり清純さを感じさせるかわいいふたり、それでいてちゃんと情熱的。すごい……もう言うことなし!素晴らしい……。゚(゚´Д`゚)゚。
二人がここでこうなるとは予想もしてなかったので驚きましたが、いい!
前回の衝撃の引きから大団円。面白かった……!

さいとう先生の柱はなんと、前回の内容がきっかけで、ミクさんの詠う祝詞にハマってしまいました、古語は美しくていやされるなぁ、だそうです。
2月号まであと少し。今月は大満足でした。

最新情報をチェックしよう!