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「『赤毛のアン』の秘密」小倉千加子 感想

  • 2018年8月6日
  • 2018年10月28日
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[amazonjs asin=”4006022387″ locale=”JP” title=”「赤毛のアン」の秘密 (岩波現代文庫)”] 先日、自由な時間があったので駅前のジュンク堂に行って、三時間かけて読みたい本をじっくり選んだのがすごく楽しかったです。
小倉千加子さんの「『赤毛のアン』の秘密」。2004年刊行の本が、2014年に岩波現代文庫に収められて、それを今頃になって読んだわけですが、衝撃的な内容でした。十代の頃からアンブックスが好きで、白と紫の装丁のハードカバーも持っていたし、今も本棚に新潮文庫版があります。ただ最近は読み返す機会が減っていましたが、それぞれの巻の内容は覚えているし、特に好きな部分は今でも思い出せるくらいには好きなんですが……。
小倉さんはフェミニストで「アン」という装置を使って持論を展開しているだけ、全てを最初から結論ありきで語っている、あと文章がひどい……などなど批判も多い本です。それにモンゴメリがアンブックスを好きで書き続けたのではない、結婚生活にも大変な苦悩を抱えていたーーということは薄々知っていました。それにしてもこんなにも苦しんで、しかもその苦しみが自縄自縛からなるものだと書かれると、本当に悲しくなってしまいました。「自分を偽ったまま生きていくことは出来ない」って、本当にそうなんだ、精神的苦痛が肉体を滅ぼしてしまうんだ……と怖くなりました。
彼女はプライドは高かったが自尊心は低かったーーという、え、その二つの違いを定義してくれないと意味がわからない! という一文があるのですが、モンゴメリは虚栄心、みえ、家柄と自分がベストセラー作家だという誇り、それに時代的・地域的な差別心が加わり、他者より優れた並外れた女性であるという能力にたいする矜持があったが、反面、人目を気にせず自分のしたいことをする、自己(とその境遇)に心底から満足を覚えるということがなかったのかと思います。揺らぎない自分ーー確固たる自己同一性がなかったーーと言われてしまうと、すごく面白い本だと楽しんで読んでいた自分までもが否定されたようで悲しくなるんでしょうか?
と、物悲しい気分に陥っていたのですが、発見もありました。アンがやけにダイアナに冷たい(下に見てる?)ことや、よく言われているギルバートの存在の薄さ、結婚の問題。なるほど! と長年のもやもやがすっきりしたこともありました。
考えてみれば自分はアンがキャラクターとして好きというよりも、ロマンチックな世界観や外国の生活への興味や憧れで読んでいたのかな? という気もします。昔は王由由さんの著作とかも好きで読んでたし。
どっちにしろ、自分はあまり「アン」を深く読み込んでいなかったんだな……ということを気付かせてくれた、貴重な読書体験でした。
それとネットのどこかで、モンゴメリが隠し続けた夫の病気のことを「村の生活で隠し通せるということは絶対にない。みんな知ってて知らないふりをしてくれていたはず……」という意見を読んで、本当にそう! 村の牧師にはみな興味津々だと、何よりモンゴメリ自身がそう書いてる! とそれも衝撃でした。でもそれを全部分かっていて、それでも嘘を突き通すことがモンゴメリにとっての真実だったのだとしたら、本当に悲しいことだと思います。

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