「ポーの一族 春の夢」萩尾望都 感想まとめ

[amazonjs asin=”4091395600″ locale=”JP” title=”ポーの一族 ~春の夢~ (フラワーコミックススペシャル)”] ついに「春の夢」コミックスの発売日ですね! 素敵な表紙……フラワーズ2016年7月号の表紙絵ですね。あの日の感動が蘇ります(^^)
でも広島は明日以降発売なので、とりあえず今まで書き散らした感想をまとめておきます。
以下ネタバレありの感想です。
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「ポーの一族 春の夢」

一話はこちら
一年以上前なんですね!時が経つのは早いなあ……。この時の違和感に負けずに最終回まで読み続けて本当によかった。
「フラワーフェスティバル」で主人公のみどりが無理解なママに、自分がバレエをずっと続けたいということを訴えるシーン。
「バレエって美しくって、感動できるそういう世界を、あたしもつくりたいの」
そう、美しくて哀歓に満ちていて、時々はくすっと笑わせてくれて、感動して……漫画もバレエと同じ。芸術なんだと思わせてくれるのが萩尾先生の漫画なのです。
(こういう説明って、バレエに感動しないママには無意味なのかしら)
確かに無意味にしか感じられない人もいる中で、心から作品を愛し、自分の人生の一部のように深く味わう人もいる。後者に幸福を与えてくれて、ありがとうございます╰(*´︶`*)╯

二話
3月号の表紙……!萩尾先生のカラー、正直あまり好きじゃないんですが、このエドガーは素敵……。背景色が赤で書店でも目立ってました。
「連続掲載スタート!」って表紙に入れたりして親切なんですが、「ポー」が終わった後のフラワーズは果たしてどうなるんだろうと少し心配です。
待望の連載再開だけあって、「春の夢」が巻頭カラー32pで登場です。
アランと昔語りをするエドガーから始まって、見開きの扉絵美しい……!ベッドの上で、眠るアランの肩を抱くエドガー。静謐な空気感。
萩尾先生は2016年度の朝日賞を受賞されたんですね、おめでとうございます。
「覚えてる?」と一ページの内に三回エドガーはアランに問いかけます。
思い出を共有するって結局は愛の一つの形なんですかね。年を重ねた夫婦がいつの間にかしっくりきているみたいに。その人としか語り合えないことがあることが?
新キャラ「ファルカ」、神秘的なオネエで同族! 前回あまりにたくさん詰め込まれていて、とっ散らかっているようにも見えた要素が、エピソードとして機能し始めた感じです。
絵もきれいだし、アランはますます可愛い!
エドガーへの恋にとらわれるブランカ……悲しみのない赤い家……不安定な少女の心がどうなってしまうんでしょう。エドガーはアランのことしか考えてないし、罪な少年だわ〜ほんとに。
ポーの村、大老ポー、バラの村からエドガーに会いに来た黒衣の婦人……完全にファンタジーなのに、萩尾先生が現代の視点からリアリティを足してくれて、謎解きに胸が踊ります。なんという濃密で物悲しい大河ロマンなんでしょう!
「オレはなァ、考えるのさ。いったいオレたちって何者なの? ところがよく解らんのだ」
それは吸血鬼だけでなく、人間そのものへの問いかけです。「火の鳥」で手塚先生はナメクジが築いた帝国が隆盛を極めながらも脆くも崩れ去り、存在すら初めからなかったかのようなしかし架空とも言い切れない歴史を鮮やかに描いて問題提起してくれました。
萩尾先生はファルカに答えを与えてくれるんでしょうか?
「悲しくて思い出のためレオパード柄の布を染めたのよ」
「いつもぼくは残される」
物語を読み終わった時、そこに見出せるものはいったいなんなのか。……あーでも面白すぎて読み終わりたくない!!
今回は一族のヒストリーがわかる年譜つきでした。

三話
今回の扉絵も素敵。古き良き少女まんがそのもの!
アランがいるから村に帰れないとは。新事実が色々判明。
「ひとりじゃなく、アランとふたりだよ」と主張するエドガー。そしてみんなは老化するのに2人はしないの……?
ファルカの超常能力に驚くエドガーが新鮮。
wikiによるとニシコクマルカラスは日本にはいなくてヨーロッパ全域にいる。ウクライナ語でハールカ。……つがいは群れの中にあっても一緒に行動する。
子供が喋ったことによって妻の態度が一変する。萩尾先生はどうしてこんなに心理描写が上手いのかしら……。体験しなきゃ本当にはわからないでしょ?というようなことが圧倒的リアリティでしかもさりげなく描かれているんですよね……ほんと少女漫画の神!800年生きても心の傷が癒えないなんて……まるで昨日のことのように激昂するファルカ……。
金髪の元気なアラン!かーわーいーいー!ちょこちょこ嫉妬出してくるの最の高。
そして「致死性家族性不眠症」。ほんとに萩尾先生の興味の範囲の広さ、それが繋がって物語になる脳の働きはすごいです
3度目に現れた男。病気に半信半疑なザブリナは非難しますが、この状況でこの誘惑を退けられる人間がこの世にいるでしょうか?
「バルバラ異界」の雰囲気に近付いて来ましたね。でも青葉は眠ったまま衰弱してしまった……面白すぎて毎号読めることが信じられませんが、ちゃんと次号に続くです!

四話
あら、この扉絵、よく見るとかわいい…。
戦争が終結する…どの年代で戦争を体験するかによって感じ方が違ってくるのでしょうが、思春期で感じやすく、また独立前のブランカにとって戦争は永遠に続くように思われたんですね。この喜びようと言ったら、悲しくなるほどです。しかし「明るいブランカってどうよ」っていう君がどうよw アランってば。常にヤキモチ焼いております。
そして再び現れた明るく賑やかなファルカ。子供が好きで扱いも上手で、アランを誘導して自発的に自分と行動を共にさせようとしますが、時空を超えるご意見番・エドガーによって阻まれます。
あんたは自分を慕ってくれる子供が欲しいが、ちゃんと子供の面倒を見られない。たとえアランを欲しがっても、絶対に渡さない!アランはあんたの愛した「ぼうず」の身代わりじゃないーー。
その後もクロエ、シルバー、大老ポーと出てきますが、エドガーにとって大切なのはアランだけ…。エドガーがいかに用心深く、細心の注意を払って子供二人でここまで生き延びて来たか…バラの中で一晩眠るというエドガー、何も知らなくても側にいてくれるアランこそが救いなのです。
そしてついにダンおじさんが亡くなってしまい、謎の男の正体が次回判明する……?

五話
いつのまにかvol.5!今回の表紙、かわいい可愛い!天蓋付きのベッドで眠るアランに付き添うエドガーなんですが、天使のベッドがそもそもかわいいのに、なぜか花や魚、たこ、ヒトデが画面上に飛び交っていて楽しい。子供部屋の二人って感じです。
そして正直ストーリーからは脱落気味です。大老ポーの話していることが全然わからない。いやブランカ側の話は正に流れるように進んでいて、これまで出ていた伏線がカタストロフィーへと集約されて、ついに運転手がブランカを襲うというクライマックスを迎えています。やはりブランカの薄幸さがエドガーを惹きつけていたのですね。アランの意地悪ぶりも板についてきてかわいいです。
78ページは特に素敵だった…! 雨の中戻ってきてコートを脱ぐエドガー、寝ないでエドガーを待っているアラン。
「エドガーってさ ウソつくときは 目をつぶるんだ」
アランの複雑な心情を込めながらも簡潔であるというこのモノローグを、最後の小さなコマに言葉だけ閉じ込めてしまう萩尾先生のセンス、素晴らし〜! ため息……。

六話
いきなり最終話⁈ と驚き。でも今月の表紙も可愛い…!ぜひタイトルがかぶさってない状態で見たい。新・ポーだけの原画展があったらなあ!すっかりこのエドガーとアランにも慣れました。海の底の線路、蒸気機関車、木造の駅舎……そして装飾的な植物も素敵……エドガーの手にした砂時計……これだけで無限の物語が感じられる絵なのです。
例のファルカに教わった空間移動の技を使ったエドガーのおかげで危機一髪かと思いきや、……結局悲劇に。ブランカの髪がエドガーに対する恐怖で白くなってしまったのが何とも言えず悲しいです。
「ぼくが手を下すと…なぜか弱い者になってしまうんだ」
この辺り、萩尾先生が昔の設定の穴を埋めようとしている感じが萌え!です。
ブランカの命がかかったこの危急の事態にもやきもちをやいて、捨てられるくらいならファルカと行く! と自棄を起こすアランに「絶対ダメだ!」とエドガー。
絶対絶対、ぼくから離れるなんてダメだ! って言われてるんだから、信じてあげればいいのに、アランってばもう。どうしてもエドガーの一番じゃなきゃ我慢出来ないんだよね。エドガーの庇護がなければアランは生きられないんだから。そしてエドガーの言いなりにならない、意思をもった他者だからこそ、エドガーはアランに生かされていると感じるんだよね! ファルカには痴話げんかって言われてるけど、ほんとこのふたりって……素晴らしい組み合わせ( ;∀;)
「アランがいないと、ぼくは幽霊になってしまう」
エドガーの俯いた寂しげな表情も相まって、この殺し文句最高なんだけど、
「きみがそういうなら幽霊じゃないんだろうな」の流し目も痺れる〜!!
結局ブランカはファルカが連れて行き、エドガーたちはまた旅へ。
「あの人たちはどこへ行ったのーー?」「夢かも…」
春の夢って憧れの象徴なんですね。184ページから始まる6ページ分のエピローグが美しいです。月並みな言い方ですが、文学作品のよう……でも絶対に、まんがでしか表現出来ないという……この。
「きみは壊れた時計が好きなんだ。だからちょっと壊れた人間のそばにいたがるんだ」これは元人間で永遠の少年・アランにしか言えないセリフ〜!
「あたしは……思い出になってしまった」とブランカ。
ミュラー/シューベルトの「冬の旅」の中の「春の夢」。過去にしか存在しない、どこにもない幻の春。絶望して死を願うほどに鮮やかな夢。
あ〜本当に、歴史に残る名作ですよ、新旧ともにポーは! 萩尾先生、予定より長い連載をありがとうございました!
コミックスは全1巻で7月10日頃発売。そして来春には新作が! うれしい……。
宝塚の舞台化はあまり興味ないですが成功してもっと「ポー」の知名度が上がるといいと思います(^o^)

まとめて貼るとすごい長さに。スクロール地獄すみませんm(__)m

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