「とりかえ・ばや」感想② フラワーズ2017年4月号

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「とりかえ・ばや」episode56.嵐吹く

銀覚の命を賭けた呪詛のために都は重苦しい雰囲気に包まれています。
「近頃ーー御所は呪われているのではないか?」町の者がそう噂し合います。
東宮が退いたまま空位になっていたり、名のある僧侶(銀覚)が流刑にされたり、政治が乱れているからだ、と。
周囲の者が次々に病に寝付いていくことを、主上は関白左大臣と相談します。
陰陽師の占いによると宮中の大がかりな厄払いが必要だと。都中の寺社に祈祷・調伏をさせますので、上様は写経と罪人の減刑をーー。
「銀覚以外は減刑しよう」
「それがようございます、上様」
「そなたが頼りだ」
「おそれ多いこと…」
それで事態が好転するか確たる見通しも持てないまま左大臣は退出していきます。ふうとため息をついて、脇息にもたれる主上……(疲れておられる)とそれを切ない思いで見つめる沙羅の視線に気付いた主上が流し目をくれて、
「尚侍、近う」とお召しになります。
あの七夕の夜以来、直接のお声がけもなくなり(怒っておられるのか)と落胆していた沙羅は、二つ返事でお側に上がりますが、主上に見つめられると身の置き所がないように俯いてしまいます。
少しやつれた感じの主上の憂い顔、厳しい顔は神々しいほど美しいので無理もないです(*´Д`*)
このところ宮中に病が流行っていること、尚侍も気がかりであろう。宿下がりを申し出る者も多い。
はい、女御様がお二方も…付き添う女官たちも減ってしまうので寂しく感じます。弓弦親王も寝込まれたままで…。
親王もこの内裏から出して療養させたい。後見役の左大臣家で面倒をみてくれぬか?
もちろんです。
「尚侍も弓弦親王に付いて宿下がりするように」
顔を見合わせて話していたのに、ふいに目を背けて主上が言います。反論は許されない、厳しい、取りつく島もない横顔……。
思いがけない言葉に目をみはった沙羅も、今は個人の気持ちより優先すべきものがあると納得しつつ、「…されど、いつまで?」と問い返します。沙羅が完全に女性になってる! 疲弊している主上を困らせることは出来ないと、一歩引くいじらしさ。
厄払いが済んで弓弦親王が快復するまで、という回答に、
(長くかかりそうだ。主上と離れるのがつらいな…)
という想いを飲み込んで俯くことしか出来ない沙羅を、苦々しく眉をひそめた主上が横目で流し見たと思うと。
「そなたまで病に捕らえられたらと恐ろしくなった。…許せ」
と頬を染めて呟くではないですか! 自分につれなくする沙羅に腹を立てているどころか。病や流言に対して決定的な手を打つことが出来ない自責の念に苦しみ、せめて愛しい相手だけは安全なところに……という深い愛情。
「そのようなお言葉…もったいない!」
嬉しさを隠し切れない沙羅を面映ゆいお顔で見つめる主上……あ〜もうなんてかっこいい!可愛い!
上様こそご静養を……と一応は提案してみる沙羅ですが、帝がこの危急時に内裏を離れれば民の心が休まらぬだろうと即答されて、引き下がります。
名残惜しげにしばしの別れを告げる二人……。振り返らずにはいられない沙羅に対して、主上は御簾越しに光を浴びながら、姿勢を正したままでひとり物思いに耽っています。
(上様はまるで汀に孤り立つ白鷺のよう)胸が締め付けられる思いの沙羅なのでした。

ところがニ日後! 沙羅の残して行った扇を手に気怠げに過ごしていた主上の元に、尚侍が帰参したとの報せが!
じきに輝くばかりの明るくいかにも健康的な沙羅が顔を出します。この時の主上の嬉しそうな顔!
でも主上は沙羅を守るために宿下がりさせたのですから喜んでばかりはいられずに、何か起きたか? なぜこんなに早く戻って来た? と問い詰めます。
用意していたかのように、よそ行きの笑顔で沙羅は答えます。
弓弦親王は左大臣家をたいそう気に入られた様子で、東の方と西の方も二人とも大切に介抱してくれていますので大丈夫です。
と意気揚々に語ったかと思うと一転、袖で顔を隠してはにかんで、主上の食い入るような視線を避けるように頭を下げます。
「お許しあれ」
主上のお気持ちはありがたい。本当に嬉しく思います。でも私は上様と清涼殿を守りたいのです。あなたとなら何も怖くない。ーー目を伏せて、危険は承知の上の覚悟を告げる沙羅に、主上は黙って手にしていた扇を差し出します。
「許す」
沙羅の覚悟を受け止めた晴れやかなお顔!そう、この二人はこうじゃなくちゃ。しおらしい沙羅も可愛いけど、主上を守れるのは沙羅しかいない!

一方半蔀車でお出かけの左大臣一行。うつらうつらと居眠りするくらい穏やかな道中であったのにいきなり曲者に襲われます。
何者…と従者たちが騒ぎ出した直後に、間髪入れず車に入って来た者に斬り付けられて、初めは直衣をかすめたものの、すぐに左肩を刺され血塗れで倒れます。
何者…誰の命で…と朦朧としてくる意識の中で、死ぬのか……と仰向けに目を閉じる左大臣の頭に浮かぶ心残りは二人の子のこと。
もうあの子たちを護ってやれぬのか。
最後に一目、もうずっと会ってない、泣き虫のわが息子の顔が見たかった……
「お父上! 気をしっかりお持ち下さいっ‼︎」
そう怒鳴りつけられて、目を開けた左大臣の見たものは。
「私です」
刀を手に飛び込んで来た、凛々しい逞しい公達。
助け起す間にも、刀と弓矢で応戦した結果、間者たちは逃げて行きましたという従者の報告を受け、礼を言って労う睡蓮ーーすっかり面影の変わった一人前の男らしい姿に、涙を流して左大臣は息子に取り縋ります。
「睡蓮ーー!!」
まさかの感動の再会! 睡蓮、ついに都へ帰還です!

沙羅も睡蓮も良い方向へぐっと成長した姿を見せてくれて、支えられ護られる側から一気にステップアップしています。感動……。
衝撃でしたが、梅壺様との噛み合わない夫婦生活が描かれたことによって、主上の沙羅への執着が腑に落ちて後半の二人の心のつながりにぐっと深みが出ましたね〜。同じ「二人きりでの語らい」がこれほど鮮やかに対比されるとは……!
役者が揃ったところで、どう銀覚の呪いと対峙していくのでしょうか。あ〜今月も主上は素敵だった!

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